インテリジェンス・ナウ

ビンラディンを追い詰めた5年間の「キャノンボール作戦」

執筆者:春名幹男 2011年5月13日
タグ: CIA
エリア: 中東 北米 アジア
高い塀に囲まれたビンラディン容疑者の家 (C)時事
高い塀に囲まれたビンラディン容疑者の家 (C)時事

 オバマ米大統領がオサマ・ビンラディン容疑者殺害を発表した翌2日、大統領の命を受けた特使がひそかにパキスタンの首都イスラマバードを訪問した。  この特使はパキスタンに対し、パキスタン情報機関幹部がアルカイダと接触したかどうか突き止めるため、これら幹部のリストを要求した。特に米側は、パキスタン3軍統合情報総局(ISI)のS部の現状に関する情報提供を求めたという。  S部は、冷戦末期のソ連軍アフガニスタン侵攻の際、ビンラディンを含むイスラム教原理主義組織と協力してソ連軍と戦った。  この数カ月間、米国、パキスタン両国の情報機関の間では、同盟国とは思えないほど、激しいやり取りが交わされてきたが、ビンラディン殺害後、その対立が深刻度を増した。  米国側は、パキスタンが事実上ビンラディン容疑者を匿っていた疑いを強め、これに対しパキスタン側は一部の米中央情報局(CIA)工作員の米国への帰国を要求している。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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