日本の情報空間の活性化を目指して

執筆者:池内恵 2011年9月7日
タグ: 日本

 このたび、『フォーサイト』編集部からのお誘いを受け、かなり躊躇したのだけれども、「専門家の部屋」への参加を決めた。

 躊躇の理由はいくつかある。なによりも、頻繁に情報発信をするような研究の仕方を、元来はしていないことがある。私の中東を見る姿勢は、原則としては、社会の規範・思想の長期的な変化を見守り、それが政治にどのような影響を与えていくか見届けていくことに尽きる。1日単位どころか1カ月単位での動きも、本来ならそうめったにないはずだ。

 「元来は」「原則としては」「本来なら」と重ねたのは、今年になって表面化したアラブ諸国の政治変動が、思想レベルでの長期的変動が、政権や体制の変動、日々の政変や内戦といった短期・中期的な帰結に目の前で次々に結びついていくという、例外的な事態を生じさせているからだ。今年の1月末から5月にかけて、連載「中東―危機の震源を読む」でリアルタイムに多数の分析を公開し続けたのは、あくまでも対象が現実に動いてきたからである。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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