公務員宿舎問題の行方

執筆者:原英史 2011年10月6日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 以前のエントリーで取り上げた朝霞宿舎問題は、10月3日、野田総理が現地を視察し、「5年間凍結」という結論になった。
 
一見、政治決断で工事を止めたように見えるかもしれないが、これは、単なる先送り。何の解決にもなっていない。
「凍結」だけでは、復興財源が生まれるわけでもない。
地元の人たちにとっても、立入禁止の空き地が放置されるという、何のメリットもない状況が継続するだけだ。
 
こうした批判をかわそうと考えたのか、「都心3区の宿舎は危機管理用を除いて、すべて廃止」という話もセットで発表された。
だが、これも、別に新しい話ではない。
かつて小泉政権下の「骨太2006」で、「今後10年間で、国有資産の売却約12兆円」との方針が示され、公務員宿舎の売却収入は1兆円が見込まれていた。
当時公表された宿舎の「移転・再配置計画」でも、都心3区の宿舎については、ほぼ同様の計画が提示されている(危機管理用などの1215戸を除き、10年間で567戸削減)。
経過を知っている人からすれば、同じカードを何度もきって目くらましを図っているにすぎない。
 
 
また、「公務員宿舎のあり方全般を見直すべく、検討会を開催」といった話も出ている。
これまでも、「国家公務員宿舎の移転・跡地利用に関する有識者会議」(2006年1月~)、「国有財産の有効活用に関する検討・フォローアップ有識者会議」(2006年8月~)、「PRE戦略検討会」(2010年9月~)など、同じような検討会が開催され、何度も移転計画や削減計画が作られてきた。
 
復興財源の確保が求められる中、同じような議論をずるずると繰り返している場合ではない。早急に方針を決定し、実行することが必要だ。
 
そんな中、宿舎だけでなく、地方出先機関用の合同庁舎の建設再開の動きも明らかになり、国会でも問題になった。
今後、地域主権改革の推進で、国の組織は大幅に縮小する可能性がある中、しかも、復興財源の確保が求められる中で、あえて今、わざわざ出先機関用の庁舎を作る必要があるとは思えない。
国民に目を向けるよりも、とかく「内輪の論理」を優先する政権の姿勢が、こんな動きにつながってしまうように思われてならない。
 
(原 英史)
 

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執筆者プロフィール
原英史 1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『官僚のレトリック』など。
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