「国家公務員の新規採用7割減」と報じられている。
「7割」という数字は、報道では一人歩きしているが、政府は公式には認めていない。
政府の公式表明は、3月6日の行政改革実行本部での、岡田副総理と川端総務大臣の発言。「平成25年度における国家公務員の新規採用は、これまでの抑制(21年度比で、23年度は約4割、24年度は約3割)を大幅に上回る抑制を行う」というものだ。
その後の岡田副総理の会見(3月13日)でも、「7割」については、「私は数字を申し上げておりませんが、大幅に、ということで・・・(省庁と調整をしている)」とのこと。
ただ、「大幅に」という以上、5割程度ではきかず、より大きな削減幅を目指しているとみてよいだろう。
こんな話が今出てくるのは、ひとつには、民主党がかつてマニフェストで掲げた「人件費2割削減」の見通しが全く立たず、批判の的となっており、かわす必要があるため。
そして、もうひとつは、増税法案への抵抗感を少なくするため「身を切る」姿勢も示したいのだろう。
だが、新規採用を減らすことが、「身を切る」改革とは言えまい。
むしろ、公務員労組や現職幹部たちとの厳しい調整から逃げ、最も弱い立場にある、まだ職を得ていない人たちにしわを寄せているにすぎない。
また、今回の採用抑制に伴い、若者が職を得て研さんを積む機会がその分だけ失われるであろうから、日本社会の未来にとってはマイナス。
安易かつ愚劣な施策と言わざるを得ないだろう。
ちなみに、国家公務員の給与水準は、若手と幹部ではかなり違う。
人事院の公表しているモデル給与例によれば、年間給与で、
・係員(25歳): 2,841,000円
・本府省課長(45歳): 11,870,000円
・本府省局長: 17,244,000円
・事務次官: 22,652,000円
といった具合だ。
つまり、幹部クラスの給与をちょっと削れば、若手職員一人分ぐらいはすぐひねり出せるはずなのだ。
政府は、特にリーマンショック以降たびたび、民間経済団体・業界団体に対しては、「新卒採用の枠拡大」などを要請してきている。
経営環境が厳しい中であることは理解しつつ、若者と社会の未来のために、採用確保を呼びかけてきたはずだ。
しかるに、政府自らは、新規採用の大幅削減というのは、一体何なのか。
一から考え直すべきだと考える。
(原 英史)
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