4月19日、難航していた東京電力の次期会長人事がようやく決まった。前トヨタ自動車相談役の奥田碩(79)や新日本製鉄名誉会長の今井敬(82)をはじめ元経団連会長クラスの大物財界人の起用を政府は画策したが、福島第一原子力発電所事故で実質的に経営破綻しているうえに、「伏魔殿」ともいわれる複雑な“官僚組織”に牛耳られている同社に切り込む蛮勇を持ち合わせた経営者は皆無だった。 無理もない。そもそも、16万人の福島県民に避難生活を強いている企業のトップを阿吽の呼吸で引き受けてくれるような使命感にあふれた民間人が簡単に見つかるはずがない。「被災者にアタマを下げて最もそれらしく見える人」という、まことしやかな人選基準が霞が関で囁かれていることから、本質を見失った半ば投げやりな政府内の雰囲気も伝わってくる。

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