インテリジェンス・ナウ

ミャンマーから南スーダンへと続く秘密工作――「中国覇権」にストップかけるオバマ戦略

執筆者:春名幹男 2012年8月23日

 オバマ米大統領の外交・安保戦略は非常に分かりにくい。オバマ氏はリベラル勢力を支持母体にしながら、そもそも情報公開に消極的で、安保戦略の実像を見せようとしない。特に対中戦略では、中国を刺激しないため、重要な戦略的成果を挙げても決して誇示したりしないのだ。
 今年1月、オバマ政権が発表した国防戦略指針は事実上、中国を敵視している。
 中国が21世紀に入り、資源調達および地政学的必要から重要な拠点として確保したのは資源輸送の動脈に位置するミャンマーであり、産油国であるスーダンであった。
 実はオバマ政権は、これら2つの拠点の切り崩しに成功していたのだ。表面的には「ミャンマーの民主化」であり、「南スーダンの分離独立」であった。だが、その現実は、戦略的要衝であるミャンマー、さらにスーダンの油田から事実上中国の影響力を排除したに等しいのである。
 オバマ政権は果たして、どのような対中秘密工作を展開したのか、断片的ファクトを追い、真相を探ってみたい。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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