アフリカの「コンピューター付ブルドーザー」メレス首相の死

執筆者:白戸圭一 2012年8月29日
エリア: アフリカ

   世界政治の中心地・米国のホワイトハウス周辺では、米国に移住した世界各国の民主活動家たちが、しばしば祖国の独裁者を批判するデモを行う。祖国で同じことをやれば身柄拘束の憂き目に遭うが、「自由の国アメリカ」でその心配はない。

 ホワイトハウス近くの筆者の職場から見ていると、数あるデモの中で参加者が際立って多いのが、在米エチオピア人によるデモだ。そのエチオピア人デモ隊が「稀代の独裁者」として糾弾してきた一人の指導者が8月20日、ベルギーの首都ブリュッセルの病院で息を引き取った。エチオピアのメレス・ゼナウィ首相、57歳。6月17日にメキシコのロスカボスで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20)に出席した際、ひどく痩せていたことから健康不安説が浮上。エチオピアの首都アディスアベバのアフリカ連合本部(AU)で7月14日に開かれた首脳会議に姿を見せず、重病であるとの観測が広まっていた。エチオピア政府によると、2015年の次の総選挙まで、ハイレマリアム副首相兼外相が首相を代行するという。

カテゴリ: 社会 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
白戸圭一(しらとけいいち) 立命館大学国際関係学部教授。1970年生れ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社の外信部、政治部、ヨハネスブルク支局、北米総局(ワシントン)などで勤務した後、三井物産戦略研究所を経て2018年4月より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授、三井物産戦略研究所客員研究員を兼任。
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