「化学兵器管理」を一致点とする大国間の取引──シリア問題への熟考(4)

 シリア問題をめぐる大国間外交が急激に動いている。この欄の前回の項でも記したが、9日のロシアのラブロフ外相によるシリアの化学兵器の国際管理および廃棄、そして化学兵器禁止条約への加盟を求める提案に、アメリカがイギリスやフランスと共に肯定的な反応を示したが、ここに中国も賛意を表明した。安保理で拒否権を持つ常任理事国すべてが、シリアに化学兵器を放棄させるという点で一致したことになる。ロシア訪問中のシリアのムアッレム外相は9日は提案を「歓迎する」とのみしていたが、翌10日にはシリア政府として「同意した」と発表している。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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