戦争は、始めるより止めるときの方がずっと難しい。軍艦マーチで景気よく始まった日本の戦争も、昭和二十年八月に泣きの涙のうちに終わった。 昭和天皇の御聖断によってポツダム宣言受諾と決まり、詔書収録のあと、録音の具合を気遣う天皇が「もういっぺん読もうか」と仰ったと語って、当時の内閣書記官長・迫水久常は回顧談の途中で絶句落涙した。大日本帝国が七転八倒のうちに矛をおさめた瞬間である。 私は、もう一つの戦争が終わる瞬間を目撃した。それは一九七五年四月二十九日、南シナ海に浮かぶ米第七艦隊旗艦ブルーリッジの飛行甲板でだった。
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