「原発利権」そっくりの「薬価統制」の闇

執筆者:上昌広 2014年4月14日
タグ: 日本 原発
エリア: 北米 アジア
 政府による薬価統制が問題(中央は田村憲久厚労相)(C)=時事
政府による薬価統制が問題(中央は田村憲久厚労相)(C)=時事

 医療業界の不祥事が続いている。特に深刻なのは臨床研究だ。例えば、慢性骨髄性白血病(CML)治療薬の副作用研究のため、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科を中心に22の医療機関が参加した「SIGN試験」では、研究計画書からデータ収集、学会発表まで、スイス製薬大手の日本法人で当の薬剤の製造販売会社である 「ノバルティスファーマ社(ノ社)」が関与し、結果を医師が「医師主導臨床研究」として発表していたことが判明している。ノ社の営業担当者が、黒川峰夫・東大教授(血液・腫瘍内科)の名前で各施設にメールを送っていたというのだから、開いた口が塞がらない。勿論、お手盛りの研究結果は自社製品の販促活動に利用した。4月3日、ノ社の幹部が総退陣したが、現時点で真相が十分に解明されたとは言い難い。

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執筆者プロフィール
上昌広(かみまさひろ) 特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長。 1968年生まれ、兵庫県出身。東京大学医学部医学科を卒業し、同大学大学院医学系研究科修了。東京都立駒込病院血液内科医員、虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年3月まで東京大学医科学研究所特任教授を務める。内科医(専門は血液・腫瘍内科学)。2005年10月より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究している。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」の編集長も務め、積極的な情報発信を行っている。『復興は現場から動き出す 』(東洋経済新報社)、『日本の医療 崩壊を招いた構造と再生への提言 』(蕗書房 )、『日本の医療格差は9倍 医師不足の真実』(光文社新書)、『医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社+α新書)、『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日 』(朝日新聞出版)など著書多数。
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