切るべきものを切れず、主力の分野も不安だらけ。債権者・大株主の利害は複雑にからみ、経営陣の足並みも揃わない。三洋の行く末は――。「非常に厳しい決算だったが、過去を引きずる体質に決別し、本当の意味でスタートを切れる態勢にした」 五月十八日、監査法人や金融機関への根回しなどに手間取り、松下電器産業やソニーなど大手電機各社から約一カ月遅れでこぎつけた決算会見の席上で、三洋電機の井植敏雅社長はそう大見得を切った。 だが、その言葉を額面どおり受け取る向きは少ない。 最終損益は二千五十六億円の赤字。昨年十一月時点での見込み(二千三百三十億円)から赤字を三百億円近く圧縮できた格好である。ただ、それはふたつの僥倖に助けられてのものだった。
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