クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

これからが面白いビルとヒラリーの物語

執筆者:徳岡孝夫 2006年7月号
エリア: 北米

 よその夫婦のことを心配しても始まらないが、ビルとヒラリーのお伽噺は、この先どうなるのだろう。 ヒラリー・クリントンにとって当面のヤマ場は、今年秋の中間選挙だろう。彼女はいま、ニューヨーク州選出の連邦上院議員。アメリカを経営する百人の重役の一人といっていい。早くも演説や資金集めのパーティをしている。有力なライバルもいないから、再選確実といって間違いない。人気も上々だそうである。だがこれが、傍目に見るほど簡単ではないという。 彼女はニューヨークに縁もゆかりもない、いわゆる落下傘候補である。そしてニューヨークには、東京では想像もできないほどの強い「わが町」意識がある。一例がメトロポリタン歌劇場、幕間のロビーに満ちる「あーら、しばらく」で始まるお喋り。一度のベルくらいでは、なかなか客席に戻ってくれない。あの賑やかさ、東京文化会館や歌舞伎座にはないものだ。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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