「聞き書き」の意味を問い直す(上)思い出のハンバーグ

執筆者:六車由実 2014年8月2日
カテゴリ: 社会 政治 カルチャー
エリア: アジア

 増村紀子さん(仮名・昭和13年生まれ)がすまいるほーむにやってきたのは、昨年の7月下旬であった。紀子さんは、公営住宅に独り暮らし。レビー小体型認知症を患い、幻覚や被害妄想の症状があるため、生活上に様々な困難な問題が出てきたり、他の住民とのトラブルも多くなっていた。たとえば、物が無くなるという妄想のために警戒して長い間自宅で入浴ができていなかったり、また、気づくとベッドの上に男の人が座っているという幻視のために、夜間はベッドに横になれず、居間の座椅子でうとうとすることしかできなかったり。あるいは、隣の住民が知らないうちに家に入ってきて物を盗んでいくという被害妄想のために、隣の住民に抗議に行ったりすることも度々あったという。

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