日米修好通商条約の批准書を携えた万延元年遣米使節すなわち新見豊前守正興ら七十七人のサムライは、一八六〇年二月、米艦ポーハタンに便乗して品川を発った。ハワイ経由サンフランシスコに安着したが、そこは国の都ワシントンを遠く離れたカリフォルニアだった。 カリフォルニアは合衆国三十一番目の州ではあるが、まだいわゆる「陸の孤島」だった。東にはシエラネバダ山脈やモハーベ砂漠が立ち塞がり、東部に行く陸の便がなかった。仕方ない。サムライたちは再び船でパナマに到り、そこから日本人初の団体鉄道旅行をして大西洋岸に出、三度び船でワシントンに達して任務を果たした。

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