病気を治すのは「いのちの力」 (9)

組織の「ミッション=使命」を明確にすべし

執筆者:髙本眞一 2015年1月24日
カテゴリ: 医療・サイエンス

 ミッション(使命)ということは、私にとってずっと大きな課題です。なんのために自分は生きているのか? 中学生のころから考え続けてきて、今も考え続けています。私は、さまざまな立場で仕事をしてきました。そして、その場所における自分のミッションは何か? 自分の属する組織のミッションとは何か? を明確にすることに努め、明らかになったならば、そのミッションを果たすべく全力で対してきました。

 三井記念病院は私が病院長に着任した翌年に医療機能評価を受けることになり、着任した年の暮ごろから準備を始めました。医療機能評価で要求されることは多々ありますが、中でも一番大切だと考えられていることは職員全員が病院の医療理念を暗記して、いつでも言えるということがあります。しかし、私は職員にその時の医療理念を聞いてみましたが、ほとんどの職員は言うことができませんでした。その医療理念は借物で、本物でないということを認識するとともに、もっと分かりやすくしかも力強く我々をサポートするものに変えねばと思いました。医療理念とは、つまり、病院のミッションです。
 病院の以前の医療理念は次の通りです。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
髙本眞一(たかもとしんいち) 1947年兵庫県宝塚市生れ、愛媛県松山市育ち。73年東京大学医学部医学科卒業。78年ハーバード大学医学部、マサチューセッツ総合病院外科研究員、80年埼玉医科大学第1外科講師、87年昭和病院心臓血管外科主任医長、93年国立循環器病センター第2病棟部長、97年東京大学医学部胸部外科教授、98年東京大学大学院医学系研究科心臓外科・呼吸器外科教授、2000年東京大学医学部教務委員長兼任(~2005年)、2009年より三井記念病院院長、東京大学名誉教授に就任し現在に至る。この間、日本胸部外科学会、日本心臓病学会、アジア心臓血管胸部外科学会各会長。アメリカ胸部外科医会(STS)理事、日本心臓血管外科学会理事長、東京都公安委員を歴任。 ↵手術中に超低温下で体部を灌流した酸素飽和度の高い静脈血を脳へ逆行性に自然循環させることで脳の虚血を防ぐ「髙本式逆行性脳灌流法」を開発、弓部大動脈瘤の手術の成功率を飛躍的に向上させたトップクラスの心臓血管外科医。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top