【ブックハンティング】“いかにもインド”な物語を普遍的な文学にした力量

執筆者:岡田浩之 2009年5月号
エリア: アジア

 インド・ブームは終わったのかもしれない――そう思ったのは、今年の米アカデミー賞の発表を聞いたときか、それとも、この小説の邦訳が出たのを知ったときだったか。いずれにせよ二月の下旬のことだ。 アカデミー賞では「スラムドッグ$ミリオネア」が今年最多の八部門を制覇し、『グローバリズム出づる処の殺人者より』の原著The White Tigerは昨年の英ブッカー賞(あのカズオ・イシグロが『日の名残り』で受けた)を獲得して、日本にも早々に紹介された。いずれも現在のインドが生んだ、現在のインドを舞台にした作品で、それが国際的に最高級の評価を得る。まず経済の世界で始まったインドの成長とインドへの注目が文化の分野にまで及んできた。

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