ノーベル平和賞は本来、欧州知識人の理念を反映した政治的な賞であり、選考には「古い欧州」の利害が絡んでいる。 英紙タイムズも「選考委員会の決定は極めて政治的だ。過去6人の受賞者のうち3人はブッシュ大統領の政敵だった」と書いた。2002年のカーター元大統領、05年の国際原子力機関(IAEA)、07年のゴア元副大統領はブッシュ政権に批判的で、欧州の味方だった。「平和賞は底意地の悪い欧州人が米国の凋落を早めようと仕掛けた罠」(外交専門家)とのうがった見方もある。 2009年の平和賞に決まったオバマ大統領は「自分は賞に値しない。驚き、恐縮している」とコメントしたが、ベテラン政治家なら受賞を辞退したかもしれない。平和賞が制約となり、外交選択肢が狭められるからだ。泥沼化するアフガニスタン戦争やイラク戦争、テロとの戦いで実力行使をためらうことも予想される。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン