「公共サービス改革」: 「調達改革」はよいが「官業の民間開放」はどうなるのか?

執筆者:原英史 2010年11月7日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 

行政刷新会議というと「事業仕分け」が注目されがちだが、それ以外の活動もある。
先週11月4日には、行政刷新会議の下の「公共サービス改革分科会」の初会合が開催された。
 
「公共サービス改革」とは、「競争の導入に基づく公共サービスの改革に関する法律」(平成18年制定)に基づき、自公政権時代から「官民競争入札」(通称、市場化テスト)を中心に進められてきた行政改革の一分野だ。
今回、民主党政権の下で模様替え・再発進した「分科会」では、より広義の公共サービス改革を対象とし、「調達改革」(例えば競り下げ入札の導入など)にも力を入れるという。
 
「調達改革」を進めること自体は大いに結構。
だが、初回会合の資料を見て、気になるのは、「調達改革」ばかりに焦点があたって、本丸のはずの「官民競争入札」が放置されそうなことだ。
 
「必ずしも『官』でやらなくてもよい業務の民間開放」という改革が、これまでに相当程度進展し、できることはほぼやりつくしたという状況ならば、それでもよい。
しかし、現実は、全く違う。
国でも地方でも、いまだに、「本来は民間でもできるはず」の事業を大量に「官」で独占している状況だ。
 
なぜ、これまで官業開放が進んでこなかったかというと、根底にある問題は、「官業を民間に移しても、職員の免職(公務員のいわゆる分限免職)はしない」という前提になっていることだ。
「公共サービス改革基本方針」(平成18年以来毎年閣議決定され、直近は平成22年7月閣議決定)では、民間に業務移管した場合、公務員の処遇は、「配置転換と新規採用の抑制により対応することを基本とする」と記載されている。これは、自公政権以来、踏襲されているものだ。
この方針の下では、思い切って大規模な民間移管をすることはなかなか難しく、逆に、「配置転換と新規採用抑制」で調整できる程度でしか民間移管が進まないわけだ。
 
おそらく民主党政権は、こうした事情を知り、「官業の民間開放」を従来以上に本格推進しようとすれば、職員の処遇問題に突き当たることを分かっていたのではないか。言うまでもなく、これは、民主党と労組との間で微妙な問題になる話だ。
このため、こうした問題を回避して、「調達改革」に逃げ込んでしまったのでないか・・と見えなくもない。
 
(原 英史)

twitter.com/haraeiji

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執筆者プロフィール
原英史 1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『官僚のレトリック』など。
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