オバマに求められる経済界との関係修復

執筆者:足立正彦 2010年12月7日
エリア: 北米

 2009年1月のオバマ政権発足当初から約2年間にわたり、同政権の経済政策立案の司令塔的な役割を果たしてきたのがホワイトハウス国家経済会議(NEC)議長のラリー・サマーズである。そのサマーズが今月末でNEC議長を退任し、古巣のハーバード大学での教鞭生活に戻ることになっている。中間選挙後から第112議会が開会する来月3日までの今の時期は、中間選挙で歴史的惨敗を喫したオバマ政権にとって、大胆な人事刷新に踏み切り、有権者に対し同政権の「再出発」の強い意気込みを示すためにも非常に大切な時期だ。

 オバマ政権の経済政策は当初期待されていたような成果はもたらされず、中間選挙惨敗の主因であったことは疑いがない。サマーズや既に退任してカリフォルニア大学バークレー大学に復帰したクリスティーヌ・ロマー大統領経済諮問委員会(CEA)前委員長に象徴されるように、オバマ政権の経済チームは「学者偏重」であり、経済チームに企業経営に直接従事した経験のある経済界出身者があまりにも少なすぎた。ロマーはCEA委員長在職中に、自らの経済理論に基づいて、8620億ドル規模の大規模な経済刺激策を講ずれば、失業率を8%以下に封じ込めることができると積極的財政出動を主張し続けていた。だが、オバマ政権の過去2年間の経済政策は、実際には同女史の主張どおりにはならなかった。

カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top