イラクがクウェートに侵攻した湾岸危機から八月二日で十年を迎える。湾岸危機とそれに続く戦争は、中東に新秩序をもたらし、イスラエル・パレスチナ和平を中心とした包括和平に道を開いた。この十年、中東の政治地図は著しく変貌したが、当のフセイン・イラク大統領だけは孤立感を深めながらも権力を保持している。
ところでいま振り返ると、西側諸国には「イラクのクウェート侵攻はあり得ない」とタカをくくっていたフシがあった。イラク軍はクウェート国境に集結していたが、これはフセイン大統領一流の駆け引きで、武力で他国を併合するような時代錯誤的なことはよもややるまいと思い込んでいたのだ。日本も同様だったことは、イラク軍侵攻時、イラク、クウェート駐在の日本大使がいずれも夏季休暇をとって任地を離れていた一事からも明らかだ。

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