オーストラリアはオリンピックで人種の和解に踏み出せるか

執筆者:浅井信雄 2000年9月号
エリア: オセアニア

 ウルルとは、オーストラリア大陸のほぼ中央に位置する先住民族アボリジニの重要聖地だ。二〇〇〇年六月、シドニー五輪の国内聖火リレーは、ウルルの巨大な一枚岩を起点に、アボリジニの陸上女子選手、ノバ・ペリスニーボンが第一走者となって、出発した。八月、五輪芸術祭は、アボリジニの伝統儀式で開幕している。 五輪テーマの一つ「アボリジニとの和解」を包むのは、実は人々の屈折した思いである。白人とアボリジニの最終的和解への困難な交渉が進行中であり、一部のアボリジニは五輪を抗議行動の好機とさえ考えてきた。 一七八八年、シドニー湾付近に上陸した英国のA. フィリップ海軍大佐一行が初入植した。この年が「建国」の年である。一行一千数百人のうち七百人以上が流刑囚だった。この大陸を「地の果て」と見下していたことがわかる。それ以来のオーストラリアの歴史の一側面は、白人によるアボリジニ迫害の歴史ともいえよう。そして二十世紀末の五輪を機に、両者は抗争継続か和解かの大きな転換期を迎えたのだ。

カテゴリ: カルチャー
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