国際論壇レビュー

見直される市場中心主義 狭い経済学の範疇を越えて

執筆者:田中明彦 2001年2月号

 毎年一月末にスイスの観光地ダボスで開催される世界経済フォーラムの年次大会には、今年は、森喜朗首相が日本の現職の首相として初めて参加した。昨年のクリントン米前大統領やブレア英首相ほどの大聴衆を集めたわけではないが、日本の最高責任者が、日本経済を立ち直らせるとの決意を明らかにし、また、IT戦略や日本のアフリカなど発展途上世界への継続的な関与を説明したことは意味があっただろう。世界経済フォーラムは、ここ何年も、国際論壇の趨勢にある種の方向を与えることが多くなっており、そこに日本の有力政治家が登場しなければ、日本での議論と関係なしに、世界の日本に対する見方が決定されてしまう。少なくとも、日本の首相がそこに居合わせて、それなりの発言をすることは大事である。

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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