森喜朗首相が首相官邸に党五役を呼び、「総裁選を繰り上げ実施したい」と早期退陣の意向を表明してから約一カ月。内閣支持率が一〇%を切った不人気首相に代わる新たな「日本の顔」を選ぶ自民党総裁選が、四月十一日昼の同党両院議員総会で告示された。「ラグビーで最も崇高な行いはセービングだ。私が身を挺し、皆さんがそれを乗り越えて新しい自民党が誕生することにより日本が救われる」 両院議員総会は森首相のこんな珍妙なあいさつで始まった。自らの不用意な言動で国民の政治不信、自民党離れを加速させたという自覚は恐らく今もってないのだろう。党のために自分は進んで犠牲になるのだ、と元ラガーマンの首相は胸を張り、最後は「(首相には)完投型もいれば、中継ぎやセーブポイントを挙げる佐々木のような投手もいる」「小渕(恵三前首相)さんの遺志を受け継ぎ、二十一世紀を開く多くの道筋を付けることができた」と、自身を「大魔神」になぞらえてあいさつを終えた。

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