朝はいつも四時半か五時に起きて勉強を始める。しだいに夜があけ、何種類かの小鳥がさえずり、ひんやりとして乾いた風が東向きの窓から流れ込む。庭に咲くスター・ジャスミンの甘い香りが鼻を刺激し、木々の葉や芝の緑が目に鮮やかである。そんな五月の美しい早朝が私を戸外へと誘った。 思わず、ジャック(ラブラドール犬、黒、雄、五歳)と一緒に歩き始めてしまった。生まれたての太陽がだんだんと力を増していくのを腋の汗から感じつつ早足で歩いた。近所の庭のスプリンクラーからほとばしる水を、ノズルに直接口をつけてガッシガッシと勢いよくたっぷり飲んだ後、尾を振って芝を舐めまわるジャックの満ち足りた姿を見て、私の頭の中で何かがはじけた。

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