国際論壇レビュー

イスラム世界内部の新しい論争に注目する

 戦局の推移というものは大変予測が難しい。十月上旬にアメリカ軍がアフガニスタンでの軍事作戦を開始したときには、ほぼ一カ月でタリバン政権を崩壊寸前まで追い込むことを予測できたものは多くなかった。ソ連をあれだけてこずらせたアフガニスタンである。空爆だけで屈強のパシュトゥン人戦士がアメリカに屈するわけはないではないか。山岳地帯のアフガニスタンはイラクのような容易に攻められる地形ではない。湾岸戦争の時のようにうまくいくわけがない。ベトナムのようになるだろうなどという観測もなされた。それぞれ一理ある観測であった。

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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