条件闘争から生存闘争へ 追いつめられる北朝鮮

執筆者:草壁五郎 2002年5月号
エリア: アジア

 韓国の林東源大統領特使は四月三日から六日まで訪朝し、南北の鉄道・道路の連結や離散家族再会、経済協力推進などで合意、関係を修復させた。北朝鮮の金正日総書記はプリチャード米朝鮮半島和平担当特使の訪朝を受け入れる用意を表明し、日朝赤十字会談開催なども確認した。ブッシュ政権発足以来、その対北強硬政策の前に「引きこもり」を決め込んでいた北朝鮮が、ようやく外部へ打って出る姿勢を示した形だ。 しかし、これで展望が開けたわけではない。今回の合意は東部の鉄道・道路の連結事業以外はすでに合意しながら中断していた事項の再開を確認したに過ぎない。北朝鮮としては、事実上年末の大統領選挙までしか任期のない韓国の金大中政権を最大限に利用して実利を引き出そうとの戦術だ。一方には、南北関係改善の演出で、日米韓三国の対北朝鮮政策の温度差を際立たせ、米国の対北包囲網を打破しようという思惑もある。

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