報奨金三千万ドルせしめた密告者がどこの誰か知らないが、ウダイ(三九)とクサイ(三七)は殺された。神経の傷つきやすい日本では、血糊に濡れた顔写真を伏せた新聞があった。スークの肉屋には血のついたヤギの首がぶら下がっている国では、あれくらいは平気。というより、あれを見せなきゃ、兄弟を仕留めたという話を誰も信じない。 メソポタミアに恐怖政治の王国を建て、子々孫々に王朝を継がせようとしたサダム・フセインの野望は潰えた。だがイラク人は、そう簡単には「解放」を喜んでいないようだ。 どの国のどんな政権下にも、体制派は必ず存在する。とくに独裁の国では、人は身の安全のため体制に加わって生きようとする。サダムは二十年以上も大統領で、バース党の支配はさらに長く、三十数年に及ぶ。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン