【インタビュー】榊原清則(慶應義塾大学総合政策学部教授) 企業はまだ日本の大学を評価していない
――このところ日本は産学連携ブームですが、産業史の視点でみると、産学連携による産業力強化にはどのような背景があるとお考えですか。榊原 二十世紀半ば以降、産業界は三つの大きな流れに遭遇しています。リニアモデルの破綻、サイエンス直結型産業の増加、そしてシリコンバレーモデルの登場です。 リニアモデルとは、研究から開発、設計、生産、販売へと直線的(リニア)に進むビジネスモデルで、二十世紀の産業を規定する重要なビジネスモデルです。それを支えたのが企業が独自に抱える研究施設でした。十九世紀半ばに、企業として初めて自社研究所を開設したのはドイツの化学産業で、この分野は川上の基礎研究成果がそのまま川下の商品(成果物)に結びつき易く、イノベーション効果も大きかった。これがアメリカにも波及して自己完結型のビジネスモデルの基盤となりました。
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