インテリジェンス・ナウ

前面に出たリビア情報機関「死の大使」の異名をとる男

 政治とは騙しの技術である。ブッシュ米大統領が年末、リビアが大量破壊兵器の廃棄に合意したと発表した時、改めてそう思った。 大統領は会見でやたら「成果」を強調した。リビアは核兵器を開発していたが、アメリカの強硬な安保戦略に屈して、核兵器・化学兵器開発をすべてやめることになった――。そう印象付けようとする意図なのだ。 だが本当のところ、リビアの核兵器保有はまだ「数年先のこと」と、現場を視察したエルバラダイ国際原子力機関(IAEA)事務局長は真相を漏らしてしまった。 リビアの大量破壊兵器が近隣諸国に脅威を及ぼしていた事実はない。リビアが危険視されたのは、国家テロに関与していたからだ。だがテロに関して、ブッシュ大統領は「リビアは対テロ戦争に全面的に取り組まなければならない」とあっさり言及しただけだった。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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