牛丼の吉野家が、輸入牛肉のストックが切れたので、メニューから牛丼を外した。すると全国に展開しているチェーンの中のただ一店で、たった一人の客が「なぜ牛丼を出さないのか」と暴れ、何かを壊すか人を殴るかした。その記事は、小さくではあったが、すべての新聞に出た。 マス・メディアとは、そういうふうに現実を伝えるものである。本日から牛丼はありませんと聞いて温和しく帰った人、別の物を注文した人のことは一行も出ない。メディアによる現実の歪曲か? いや、簡単にそうだと言えない。あったことの報道は易く、なかったことの報道は至難の業だからである。
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