台湾政治-切れすぎたカミソリの退場

執筆者:野嶋剛 2011年1月20日
タグ: 中国 台湾 日本

台湾の与党国民党の秘書長、金溥聡が月内の辞任を表明しました。金は馬英九総統の唯一無二の側近で、支持率低迷で選挙連敗の事態を受けて今から1年ほど前、日本で言うところの幹事長にあたる秘書長に就任しましたが、突然の辞意表明に、台湾政権に激震が走りました。

表むきの金のコメントは「段階的任務を終えた」とし、馬総統も2012年春の総統選に向けて、選挙チームに入ってもらうことになると取り繕いました。しかし、実際のところ、先の五大都市選挙での国民党の事実上の敗北を受けて、金のこれまでの強引な党改革や候補者選定に対する党内「守旧派」の反発が吹き出し、馬総統も抗しきれなくなったと読み解くべきです。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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