米、約40人と8トンの機材日本に派遣、徹底的に現地情報収集

執筆者:春名幹男 2011年3月17日

 一刻も早い注水が求められる福島第1原発。自衛隊ヘリによる空からの放水は16日見送り、17日に実行された。上空の放射線量の低下を待った、というのが1日延期した理由だ。恐らく、放射線量は地上より上空の方が高かったのではないか。
 実は、米国は日本よりもむしろ徹底的な情報収集を進め、より適確な情勢判断をしている可能性がある。巨大地震発生の2日後、13日(日)に早くも米エネルギー省と原子力規制委員会(NRC)の専門家らが来日。米軍ヘリは福島原発上空を100キロにわたって飛行し、放射能チリを収集、セシウム137やヨウ素121などの放射性同位元素を検出したもようだ。  放射能チリに関する情報は北朝鮮核実験の時も注目された。
 放射能の検出は国民にとって必要な情報だ。14日付夕刊各紙は400ミリシーベルトの異常に高い値を地上で検出したと大見出しで報じた。しかし熱を帯びた放射能は上空に舞い上がるから、上空の方が高かったのではないか。
 チュー米エネルギー長官は16日の議会証言で、「日本の対策に満足しているか」との問いに対して回答を拒否した。徹底的な情報収集と状況判断で危ういと感じている恐れがある。長官は、さらに39人の専門家と7.8トンの機材を日本に派遣すると明らかにした。その中にはエネルギー省内の情報機関である情報・防諜局(Office of Intelligence & Counterintelligence)の要員も入っているだろう。

カテゴリ: 環境・エネルギー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top