クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

何が被災者を助けるか

執筆者:徳岡孝夫 2011年4月12日

 東北の海岸の瓦礫の中で、まだ何千人もの行方不明者を探している最中だった。毎日新聞と高野連は、センバツ高校野球をやるかどうか迷った。おそらく賛否両論があった。だが彼らは決断し、甲子園で恒例の「春の祭り」を催した。  バックスクリーンの国旗を半旗に、「がんばろう!日本」を大会の合言葉にし、東北地方の代表チームも予定通り招いた。選手にも主催者の覚悟が伝わったのか、小気味よいプレーが続き、1試合平均1時間58分だった。ナイターは皆無。結果的に成功した。  いつも通りのことを、いつも通りにやる。そういう決心は、しばしば(必ずではないが)難局を突破する。昔の日本陸軍では、それを「為さざると遅疑逡巡するは、指揮官の最も戒むべきことなり」と言った。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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