東北の海岸の瓦礫の中で、まだ何千人もの行方不明者を探している最中だった。毎日新聞と高野連は、センバツ高校野球をやるかどうか迷った。おそらく賛否両論があった。だが彼らは決断し、甲子園で恒例の「春の祭り」を催した。 バックスクリーンの国旗を半旗に、「がんばろう!日本」を大会の合言葉にし、東北地方の代表チームも予定通り招いた。選手にも主催者の覚悟が伝わったのか、小気味よいプレーが続き、1試合平均1時間58分だった。ナイターは皆無。結果的に成功した。 いつも通りのことを、いつも通りにやる。そういう決心は、しばしば(必ずではないが)難局を突破する。昔の日本陸軍では、それを「為さざると遅疑逡巡するは、指揮官の最も戒むべきことなり」と言った。

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