開発援助政策は「なぜ援助するのか」の理由を探しながら進められているが、ひとつの理由が危うくなると、援助を削減するのではなく、また新しい理由を探すのだ。こんな政策はほかには存在しない--1960年代にサミュエル・ハンチントンはこう言っていた。
「人間の安全保障」という考え方がある。安全保障の主語はいつも国家だったが、国家安全保障の名の下に人権が蹂躙される例は事欠かない。保障されるべきは人間であって国家であるべきではない、という考え方だ。まったくもって正論である。2001年に「人間の安全保障」委員会が創設され、緒方貞子とアマルティア・セン両氏が共同議長に就任して、この理念は国際社会のなかにビルトインされた。日本のODA大綱のなかにも明記されている。
高い理念ほど凡人には足元しか見えなくなる。「人間の安全保障」理念からどのような開発プログラムを作るかという、いってみればラベル貼りが始まることになった。
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