「論文盗用」めぐりルーマニアが革命後最悪の政治危機

執筆者:佐藤伸行 2012年7月19日
タグ: ドイツ
エリア: ヨーロッパ

 政治家を追い落とす武器といえば、「カネと女」にまつわる醜聞が通り相場だが、最近はこれに「論文盗用」が加わっている観がある。昨年春、ドイツの次期首相有力候補と目されていたグッテンベルク国防相(当時)が博士論文の盗用疑惑で辞任したのに続き、今年4月にはハンガリーのシュミット大統領も盗用疑惑で辞任した。今年5月に就任したばかりのルーマニアの若き左翼政治家ポンタ首相(39)にも博士論文の盗用疑惑が持ち上がった。

 が、ポンタ首相は辞任を拒み、それどころか盗用疑惑を煽ったのは宿敵バセスク大統領(職務停止中)=(60)=の陰謀であるとして、バセスク氏失脚を図る熾烈な反転攻勢に乗り出した。ポンタ首相が矢継ぎ早に繰り出す手筋は「クーデター」さながらであり、ルーマニアは今、チャウシェスク独裁体制を打倒した23年前の革命後、最悪と言われる政治危機に陥っている。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
佐藤伸行(さとうのぶゆき) 追手門学院大学経済学部教授。1960年山形県生れ。85年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。90年代はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢をカバー。98年から2003年までウィーン支局で旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題を取材した。06年から09年までワシントン支局勤務を経て編集委員を務め退職。15年より現職。著書に『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)。
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