【ブックハンティング】読み筋が外れてもレスター・サローの価値

執筆者:吉崎達彦 2004年11月号

 最初にレスター・サローの『知識資本主義』(ダイヤモンド社)という本を手にとったとき、「堺屋太一の知価革命」みたいな印象を受けた。要するに、「なんとなく、真新しくはないな」と。 レスター・サローは、誰もが名前だけは知っている経済学者である。一九八〇年に出版された著書『ゼロ・サム社会』は、世界的なベストセラーとなった。しかし、世界経済はその後も高成長を続けた。冷戦の終了期に書いた『大接戦』では、日米欧が経済でつばぜり合いをする時代が来ると予言した。が、一九九〇年代は米国経済の一人勝ちとなった。このことはサロー自身も後ろめたく感じているようで、本書の中で日本経済に対する見通しが外れたことについて言及し、「私はこれ以上の間違いを犯すことはできなかったろう」と懺悔している。

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執筆者プロフィール
吉崎達彦(よしざきたつひこ) 双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年(昭和35年)富山市生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1984年日商岩井(現双日)に入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会調査役などを経て現職。新聞・経済誌・週刊誌等への執筆の他、「サンデープロジェクト」等TVでも活躍。また、自身のホームページ「溜池通信」では、アメリカを中心に世界の政治経済について鋭く分析したレポートを配信中。著書に『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)、『1985年』(新潮新書)など、共著に『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社)がある。
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