病気を治すのは「いのちの力」 (13)

信じてはいけない病院ランキング

執筆者:髙本眞一 2015年2月21日
タグ: アメリカ 日本

「患者が選んだ病院ベスト100」「がんの名医100人」のような、医療機関や医師のランキング本を見かけることが多くなりました。たくさんの人々が、少しでも良い医療を受けたいと切望して、メディアから情報を得ようとしている表れでしょう。

  しかし、医師から見た印象は異なります。実のところ、ランキングを決める基準が不明瞭で、とても信頼できる情報ではありません。特に初期のころのランキング本は、ひどいものでした。マスメディアと付き合いのある医療機関が高く評価されたり、実績よりも言った者勝ちの側面もありました。さらには、自称「神の手」の医師が、大々的に取り上げられることなどもありました。ですから、臨床医の間では、その手の本は、しごく評判が悪いのです。これは、医療界から信頼性の高い情報が公開されない一方で、読者のランキングに対するニーズが高いため、メディアが無理やり医療機関や医師のランキングをした結果なのだと思います。

カテゴリ: 医療・サイエンス
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執筆者プロフィール
髙本眞一(たかもとしんいち) 1947年兵庫県宝塚市生れ、愛媛県松山市育ち。73年東京大学医学部医学科卒業。78年ハーバード大学医学部、マサチューセッツ総合病院外科研究員、80年埼玉医科大学第1外科講師、87年昭和病院心臓血管外科主任医長、93年国立循環器病センター第2病棟部長、97年東京大学医学部胸部外科教授、98年東京大学大学院医学系研究科心臓外科・呼吸器外科教授、2000年東京大学医学部教務委員長兼任(~2005年)、2009年より三井記念病院院長、東京大学名誉教授に就任し現在に至る。この間、日本胸部外科学会、日本心臓病学会、アジア心臓血管胸部外科学会各会長。アメリカ胸部外科医会(STS)理事、日本心臓血管外科学会理事長、東京都公安委員を歴任。 ↵手術中に超低温下で体部を灌流した酸素飽和度の高い静脈血を脳へ逆行性に自然循環させることで脳の虚血を防ぐ「髙本式逆行性脳灌流法」を開発、弓部大動脈瘤の手術の成功率を飛躍的に向上させたトップクラスの心臓血管外科医。
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