安倍訪米後の「新時代」日米関係(中)一段踏み込んだ「同盟」

執筆者:武内宏樹 2015年5月23日
エリア: 北米

 前回(2015年5月14日「安倍訪米後の『新時代』日米関係(上)中国にどう対応するか」)に引き続いて、安倍首相訪米で「新時代」に入った日米関係を考察していきたい。今回は安全保障に焦点をあてる。
 今回の訪米を通して安倍首相が繰り返し訴えたのは、「『強い日本』(strong Japan)が米国のためにも世界のためにもなる」というメッセージである。安全保障のために防衛力を強化するのも、「アベノミクス」の旗印の下で改革を行って経済力を高めるのも、「強い日本」を実現するためであり、それが世界の他の国々にもいい影響を与えるという主張である。
「強い日本」というと日本の議論では「軍事力増強」と同義であるかのようにとらえる傾向があるが、筆者は国の強さ、すなわち「国力」というのはそのような狭い概念ではなく、問題解決のためにアイディアを出し、政策を決定して、それを実行に移していく能力だと考えている。つまり、「強い日本」を諸外国が実感するには、安倍政権が利益団体やナショナリズムなどに惑わされることなく、安全保障と経済改革という「国益」の根幹を成す問題にコミットし続けることが必要になるのである。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
武内宏樹(たけうちひろき) サザンメソジスト大学(SMU)政治学部准教授、同大学タワーセンター政治学研究所サン・アンド・スター日本・東アジアプログラム部長。1973年生れ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程修了、博士(政治学)。UCLA 政治学部講師、スタンフォード大学公共政策プログラム講師を経て、2008年よりSMUアシスタント・プロフェッサーを務め、2014年より現職。著書に『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)、Tax Reform in Rural China: Revenue, Resistance, Authoritarian Rule (ケンブリッジ大学出版会、2014年)。ほかに、International Relations of the Asia-Pacific、Japanese Journal of Political Science、Journal of Chinese Political Science、Journal of Contemporary China、Journal of East Asian Studies、Modern Chinaなどに英語論文を掲載。専門は、中国政治、日本政治、東アジアの国際関係及び政治経済学。
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