ブックハンティング・クラシックス (64)

「情の人」マッカーサーと「理の人」ダレス(承前)

執筆者:佐瀬昌盛 2015年9月25日

 吉田茂『回想十年』の冒頭に登場するのは、エドワード・ハウス大佐という、現代日本には馴染みの薄い米国人である。同大佐は、第1次世界大戦後のヴェルサイユ講和会議の際に、吉田の義父・牧野伸顕と旧交を温め、同行した吉田も接触を持つに至った。初対面のハウス大佐は開口一番、「ディプロマチック・センスのない国民は、必ず凋落する」と語る。大佐の念頭にあったのは、ヴェルサイユに敗戦国として出席したドイツである。吉田はこの言葉を肝に銘じた。第2次世界大戦中、この言葉は日本のために吐かれたもののようだ、と吉田は反芻したのであろう。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
佐瀬昌盛(させまさもり) 防衛大学校名誉教授。1934年生れ。東京大学大学院修了。成蹊大学助教授、防衛大学校教授、拓殖大学海外事情研究所所長などを歴任。『NATO―21世紀からの世界戦略』(文春新書)、『集団的自衛権―論争のために』(PHP新書)など著書多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top