難民問題:「存在感のないフランス」と「ドイツの打算」

執筆者:国末憲人 2015年9月30日
エリア: ヨーロッパ 中東

 主にシリアの戦火を逃れた難民が次々と欧州に到達している問題で、欧州連合(EU)は各国で分担して計16万人の難民を受け入れると決めた。ドイツが主導し、フランスが同調し、他の国々を巻き込んだ方針である。渋る旧東欧諸国では反発がくすぶっており、議論が収まるとは考えにくい。もっとも、独仏などでは自治体レベルでの実務が動き始めており、受け入れに向けた流れは止めがたい。

 言うまでもないが、難民問題はまず何よりも人道上の問題であり、人命優先で取り組む必要がある。国や地域の枠を超えた関与も必要だ。その意味で、EUの受け入れは理にかなっている。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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