対談『中央銀行が終わる日』(下)貨幣発行を自由化して新たな役割を

執筆者:岩村充
執筆者:萱野稔人
2016年7月4日
エリア: アジア

 日銀と政府が一体化してのデフレ対処だったが、格差が開きジリ貧の未来しか見えないなら、民意は一か八かの賭けに出かねない――そんな前半の流れを受け、後半では中央銀行が目指すべき新たな役割へと話は及ぶ。

萱野 『中央銀行が終わる日』の最後で岩村先生は「中央銀行に最後に残された役割は価値尺度の提供だ」というお話をされています。例えばいろんな銀行が貨幣利子率のついているような貨幣を出して、そこが競争していく。それに対して最終的に社会の価値尺度を提供するのは中央銀行の役目で、そこの部分はたぶんなくならないだろう、と。
 要するに『中央銀行が終わる日』と言いつつ、実は終わらない。ビットコインのような可能性を最大限拡大して考えたとしても、中央銀行の役割は実は終わらないと私は読んだ。

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執筆者プロフィール
岩村充(いわむらみつる) 1950年、東京都生まれ。東京大学経済学部を卒業後、日本銀行に入行。ニューヨーク駐在員、日本公社債研究所開発室長、企画局兼信用機構局参事を経て、1998年、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授に就任。現在は同大学院経営管理研究科教授。著書に『電子マネー入門』(日経文庫)、『サイバーエコノミー』(東洋経済新報社)、『貨幣の経済学』(集英社)、『貨幣進化論』(新潮選書)など。最新刊に『中央銀行が終わる日』(新潮選書)。
執筆者プロフィール
萱野稔人(かやのとしひと) 1970年、愛知県生まれ。早稲田大学文学部を卒業後フランスに留学し、2003年、パリ第十大学大学院哲学科博士課程を修了、哲学博士。津田塾大学学芸学部国際関係学科教授。著書に『国家とはなにか』(以文社)、『カネと暴力の系譜学』(河出書房新社)、『権力の読みかた』(青土社)、『金融危機の資本論』(本山美彦氏との共著、青土社)、『暴力と富と資本主義』(角川書店)など。
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