
この映画『カンパイ! 世界が恋する日本酒』(KAMPAI! FOR THE LOVE OF SAKE)は、日本酒に魅せられた1人の日本人と2人の外国人の挑戦と葛藤を描いたドキュメンタリーです。彼らの日本酒への向き合い方を米国在住の小西未来監督が丁寧に捉え、日本の「國酒」が国際化してきている現状を様々な観点から浮かび上がらせています。
「美味しい日本酒」が増える背景

今、日本酒を取り巻く状況には熱いものがあります。近年、全体の製成数量はほぼ横ばいですが、吟醸酒や純米酒などの特定名称酒の消費量は年々増加しており、また、輸出金額はこの5年で6割以上も増加しています。これは、造り手の個性がより明確に発揮された様々なタイプの美味しい日本酒が増え、日本国内にとどまらず、国際的にも評価が高まってきていることが背景にあります。
こうした動きに各々の立場から大きく貢献しているのが、本作に登場する3人です。日本酒の魅力を伝えるために自ら世界中を飛び回り、「南部美人」(岩手県)を醸(かも)す5代目蔵元の久慈浩介さん、外国人として初めて日本酒の製造責任者(杜氏)となり、「玉川」(京都府)を醸すイギリス人のフィリップ・ハーパーさん、そして、日本酒の伝道師としてその魅力を世界に発信し続けているアメリカ人ジャーナリストのジョン・ゴントナーさん。全く異なる背景を持つ3人の男が、なぜ日本酒に魅せられ、どのような想いで活動を続けているかを丹念に追うことによって、国内だけにとどまらず、世界中で多くの人々を魅了している日本酒の現状が紐解かれていきます。
詳しい内容については、是非、本作を鑑賞して味わっていただきたいと思いますが、ハーパーさんとゴントナーさんが、語学指導を行う外国青年招致事業であるJETプログラムによりイギリスとアメリカから来日したのが、1988年の全く同じ日であったという偶然には運命のいたずらを強く感じます。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。