マネーの魔術史 (4)

ネイサン・ロスチャイルド 一世一代の大博打

執筆者:野口悠紀雄 2017年6月22日
タグ: イギリス
エリア: ヨーロッパ
(c)AFP=時事

 

 ナポレオン敗北の情報を掴んだネイサン・ロスチャイルドが、ロンドンの取引所で出したのは、国債の売り注文である。

 コンソル国債の価格は、1814年には額面の7割程度だったが、ナポレオンの復権に伴って下落し、ワーテルローの戦いの直前には、6割程度にまで下がっていた。

 カトル・ブラでのイギリス軍退却のニュースで、国債はさらに値下がりした。そしていま、ネイサンは平然と売り注文を出している。人々は浮き足立ち、市場はパニックに陥った。

「ネイサンはワーテルローの結果を知っている。それは、イギリス軍敗北のニュースだ!」

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top