マネーの魔術史 (10)

北軍を勝利に導いたグリーンバックス

執筆者:野口悠紀雄 2017年8月3日
タグ: アメリカ
エリア: 北米
(C)AFP=時事

 

 アメリカの紙幣発行は、大陸紙幣の後も続き、鉄道建設などの財源として不換紙幣が用いられた。しかし、1837年の恐慌で発行停止となった。

 本格的な紙幣発行は、南北戦争(1861~65年)中に行われた。合衆国北部連邦 (the Union)も南部連合(the Confederacy)も、戦費調達のためにさまざまな方法を用いたが、そのなかで巨額の政府紙幣発行は、重要な地位を占めていた。

 61年、北軍は第1次ブル・ランの戦いで大敗を喫し、国債による戦費調達が困難になった。エイブラハム・リンカーン(1809~65年)はこの時、銀行借入で資金を調達しようとした。しかし、銀行家達は、27%という高利貸し並みの高利子を要求してきた。

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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