連載小説 Δ(デルタ)(24)

執筆者:杉山隆男 2017年9月30日
エリア: アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

大陸から「センカク」方面に迫る識別不明の2機。この非常事態に航空自衛隊は、F15戦闘機の発進枠優先を官民両用の那覇空港に申し入れるが、空港側は法律を盾に、首を縦に振ろうとしない。交渉にあたる空自飛行隊長は、民間機のパイロットに転じた先輩の話を思い出していた。

 

     20(承前)

 数年前のお盆休みの時期、先輩は満員の乗客を乗せて那覇に向かおうとしていた便の機長をつとめていた。ところが団体客のチェックインに手間どったりトラブルが重なって羽田出発が40分ほど遅れてしまった。定刻なら那覇着は22時45分、このまま遅れをとり戻せないと到着時刻は23時25分で、那覇空港のいわゆる魔の時間帯にかぶってしまう。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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