連載小説 Δ(デルタ)(25)

執筆者:杉山隆男 2017年10月7日
エリア: アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらずじ】

「戦闘機がもっとも弱みをみせるのは、飛んでいないときだよ」――エプロンに整然と並んだF15を見ながら、ふと学生時代の老講師の言葉を思い出していた航空自衛隊の飛行隊長。官民両用の那覇空港の管制官からようやく離陸許可が下り、「センカク」に近づく国籍不明機へ向けて、戦闘機が次々と飛び立っていった。

 

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 スクランブルで那覇を飛び立ってから15分あまり、対象機の大まかな位置についてははるか上空を飛ぶAWACSからすでに伝えられていたが、編隊長の2尉もその機影をまだ肉眼で捉えてはいなかった。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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