映画『新地町の漁師たち』が描く「もう1つの福島」

執筆者:寺島英弥 2017年12月3日
タグ: 日本 原発
エリア: アジア
映画『新地町の漁師たち』の試験操業の場面の小野さん(筆者提供、以下同)

 

 2011年3月11日の津波の後、がれきを残して集落が消えた福島県新地町釣師 (つるし)浜漁港。その朝の風景を、自転車に乗った撮影者のビデオカメラが写していく――。

 こんなふうに始まるドキュメンタリー映画『新地町の漁師たち』の画面には、やがて岸壁に集った男たちの所在なげな姿が現れ、「どこから来たんだ?」と、撮影者に問いかけてくる。彼らの方言丸出しの語りから、漁船群を津波から守ったにもかかわらず、再び海に出せなくなってしまったという現実が紡ぎ出されていく。

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執筆者プロフィール
寺島英弥(てらしまひでや) ローカルジャーナリスト、尚絅学院大客員教授。1957年福島県相馬市生れ。早稲田大学法学部卒。『河北新報』で「こころの伏流水 北の祈り」(新聞協会賞)、「オリザの環」(同)などの連載に携わり、東日本大震災、福島第1原発事故を取材。フルブライト奨学生として米デューク大に留学。主著に『シビック・ジャーナリズムの挑戦 コミュニティとつながる米国の地方紙』(日本評論社)、『海よ里よ、いつの日に還る』(明石書店)『東日本大震災 何も終わらない福島の5年 飯舘・南相馬から』『福島第1原発事故7年 避難指示解除後を生きる』(同)、『二・二六事件 引き裂かれた刻を越えて――青年将校・対馬勝雄と妹たま 単行本 – 2021/10/12』(ヘウレーカ)、『東日本大震災 遺族たちの終わらぬ旅 亡きわが子よ 悲傷もまた愛』(荒蝦夷)、3.11以降、被災地で「人間」の記録を綴ったブログ「余震の中で新聞を作る」を書き続けた。ホームページ「人と人をつなぐラボ」http://terashimahideya.com/
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