【ブックハンティング】「経済学者は開戦に反対した」神話の「嘘」

執筆者:片山杜秀 2018年7月11日
エリア: アジア
有沢広巳の回顧によれば、「秋丸機関報告書」を意に沿わないものとして焼却するよう命じたのは、杉山元参謀総長(写真)だったとされるが……

 

 アメリカは大金持ちだ。そんな国となぜ戦争を始めてしまったのか。近代戦は、家伝来の刀や槍を持ち出して「ちょっと戦をしてきます」というわけには行かない。国力を傾注して軍艦や飛行機を作り続けなければならない。物資で敵国を凌駕できずにどうして勝てようか。真面目に考えればアメリカには負けるんじゃないか。首都が焼け野原になり、広島や長崎に原爆が落ちてから、初めて分かることではない。当時の日本人にはアメリカの文化もかなり染みていた。アメリカの映画を観、アメリカの音楽を聴き、貧しさに耐えかねてアメリカに移民もする。大正、昭和と、そうやってきた。かの国のとてつもなさは常識があれば誰でも知っていた。

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執筆者プロフィール
片山杜秀(かたやまもりひで) 慶応義塾大学法学部教授。1963年生まれ。思想史研究者、音楽評論家。慶応義塾大学法学部政治学科卒業、同大大学院法学研究科博士課程単位取得退学。著書に『音盤考現学』『音楽博物誌』(いずれもアルテスパブリッシング、吉田秀和賞・サントリー学芸賞受賞)、『ゴジラと日の丸』(文藝春秋)、『近代日本の右翼思想』(講談社選書メチエ)、『未完のファシズム』(新潮選書、司馬遼太郎賞受賞)、『国の死に方』(新潮新書)など多数。
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