国外逃亡「タクシン兄妹」新動向に「総選挙延期」急浮上で混乱の「タイ政局」

執筆者:樋泉克夫 2019年1月16日
エリア: アジア
1月中旬、インラック前首相のFacebookにアップされた「逃亡先」での兄との2ショット

 

 インラック・シナワット前首相は、2017年8月から国外に逃亡したままである。首相在任時(2011~14年)に農民向けに実施した目玉政策の「コメの買い取り」が国家に多大な損失を与えたとの理由から、プラユット・チャンオチャ暫定政権によって起訴され、最高裁判所で判決が下されることになっていた直前での逃亡だった。

 以来、英ロンドン郊外のショッピングモールで買い物姿をカメラに収められたり、シンガポールで屋台の「タクシンそば屋」を覗き、周囲に愛嬌を振りまいたり、シナワット(丘)家のルーツである中国広東省梅州に里帰りして祖先の墓参りをしたかと思えば、北京の街を散策したり、時に日本に滞在したりと、動静が伝えられてきた。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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